“夢の素材”と言われる炭素繊維の一般的な特徴は、「軽くて強い」ことです。
これまで、その特性を生かしてゴルフシャフトや工業用ロール、人工衛星の部材などに使われてきました。
開発が始まったのは意外と古く1960年頃ですが、
近年ボーイング787やBMWi3の構造材に採用されて脚光を浴びています。

夢の素材の現状はどうなっているのでしょうか?


最近の引き合いの多くが熱対策でしたね。

炭素繊維について教えてください。

炭素繊維の大きな特徴は、「軽くて強い」ことです。比重は鉄の1/4です。
炭素繊維にはPAN系とピッチ系の2種類があり、当社はピッチ系を製造しています。PAN系はより引張強度が高く、ピッチ系は低弾性から高弾性のものまで製造できるという特徴があります。簡単に言えば、高弾性なものほど剛性が高くなります。
ピッチ系炭素繊維は、熱伝導率、寸法安定性、耐摩耗性、耐熱性、電気伝導性といった点で優れており、従来からの金属材料に代わる軽量化材料として注目を集めています。

ずばり、私たちの強みは原料からの一貫生産です。

当社の強みはどんなところにありますか?

ずばり、原料からの一環生産です。ピッチ系炭素繊維は、コールタールなどから作られます。新日鐵住金の製鉄プロセスでコールタールが副生しますが、そもそも当社の炭素繊維はこのコールタールの有効活用が目的で開発されたものです。環境を意識した3つのR(リデュース、リユース、リサイクル)がよく取り上げられる昨今ですが新日鐵住金グループとしては、早くから取り組んできていたことを示す商品と思います。
現在も製鐵所内で原料から製品まで一貫生産されていますから、品質管理が行き届いていると考えます。品質をコントロールしやすい環境にあるといえるでしょう。

ピッチ系の熱伝導率の高さが注目されています。

今後、どうやってピッチ系炭素繊維を拡販していこうと考えていますか?

今考えていることは、2つあります。まず1つめのポイントは、高弾性を活かした「産業用途における他材料の代替」です。軽量で剛性の高いピッチ系炭素繊維は自動車分野などの産業分野での軽量化で貢献できるものと思います。
もう一つは、ピッチ系炭素繊維の熱伝導率の高さなどの高機能性を活かしていくことです。熱伝導率はPAN系やその他の素材と比べて、はるかに高いんです。最近、スマホなどの電子機器の熱対策が話題となっていて、このところ引き合いで、炭素繊維は熱伝導率が高いというのでPAN系で評価したけど、全然良くない。調べてみたら、熱伝導率が高いのはピッチ系の方だったとよく言われます。業界では当たり前でも、一般にはあまりよく知られてないんですね。去年あった新規の引き合いの約8割が熱対策でした。今後は、ピッチ系の熱伝導率の高さを全面にだしていくつもりです。

また、熱伝導率の高さを中心とする炭素繊維のいろいろな機能を活用したいと思われるお客様からは、当社のミルド(炭素繊維の粉)やチョップ(炭素繊維を短く切ったもの)の引き合いを頂くケースが多いのですがこれらは、主に樹脂や金属などのその他材料と複合化してご使用されます。
鉄に比べると炭素繊維は高額です。しかし、ミルドやチョップという商品は、その他材料に配合し使用されるわけですが、ある程度の配合でうまく、炭素繊維の機能を引き出して頂ければ、コストも抑えられます。炭素繊維が母材と競合することもありません。炭素繊維には、熱伝導率の高さをはじめ、摺動特性や振動減衰性の良さといったPAN系にない特徴があります。そうした機能性を母材にプラスできれば面白いんじゃないかと思っています。

炭素繊維の開発は、日本人技術者のDNAに合っています。

個人的に、炭素繊維にはどんな想いを持っていますか?

私もいろいろな素材を扱ってきましたが、炭素繊維は今後がより楽しみな素材と思います。実は、炭素繊維のシェアは日本が圧倒的で、PAN系は日本の3社で世界7割、ピッチ系は当社と日本のもう1社で民生分野のほぼ100%です。その理由は、やっぱり日本企業が欧米企業との技術競争に勝ったということだと思います。炭素繊維は新しい素材ですから、市場に受け入れられるまでに時間がかかるんですね。きめ細かな対応も必要です。そういう意味では、(PAN系ですが)ボーイングに採用され、自動車に使われ始めたのは画期的なことです。炭素繊維開発の難しさが、日本人技術者のDNAにあっているんだと思います。


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