今回取り上げたメタル担体とは、自動車やオートバイなどのエンジンに付いている、
排気ガスをきれいにするための重要な部品のことです。
排気ガスを効率よく処理できるようハニカム(ハチの巣)状の構造になっていて、
ガスを浄化する「触媒」を付着させたものがメタルハニカムです。
当社は、世界で唯一メタル担体を素材から一貫生産しているメーカーです。

ビジネスの現状や開発の機微について訊きました。


これから車は「走る空気清浄機」になっていきますよ(笑)。

メタルハニカムについて教えてください。

ハニカムには、セラミック製とメタル製の2種類があります。最初に作られたのはセラミック製ですが、陶器系ですから熱や衝撃で壊れやすい欠点があります。そこで、メタルハニカムが開発されました。年々、世界の排ガス規制は厳しくなっています。当然、両者は技術革新による競争をしていて、性能はどんどん進化しています。燃料電池車や電気自動車の開発も進んでいますし、これから車は「走る空気清浄機」になっていくと思いますよ(笑)。

ナンバーワンを追撃する体制は整いました。

当社の現状はどうなっていますか?

現在、4輪車向けハニカムのシェアはセラミック9割、メタル1割といったところです。メタルハニカムは、主に高性能のスポーツカーやトラックで使われています。高出力だったり、振動が激しかったりするので、セラミックだと壊れやすいんですね。一方2輪車では、ほぼ100%がメタルハニカムです。なぜなら2輪車は衝撃や振動を受けやすく、金属製のメタルハニカムが向いているからです。どちらも、年間7千万~8千万台の新車市場があります。当社は今、メタル担体のマーケットで世界第2位を走っています。1位はドイツの競合他社です。私たちは今、新しい排気ガス規制が導入される市場に必死で営業をかけています。そこで2008年から2013年にかけて、2輪車の世界3大市場である中国、インド、インドネシアに工場を作って進出し、グローバル体制を整えました。これから、ナンバーワンの 競合他社を追撃していきます。

私たちにしかできない強みが、素材から製品までの一貫生産です。

当社の優位性について教えてください。

私たちの強みは、当社で生産している素材の金属箔が、高強度でありながら非常に薄いことです。薄いと何がいいかというと、まず車の軽量化による燃費向上です。自動車会社は、燃費向上にしのぎを削っていますから。そして、触媒の反応には熱が必要です。ハニカムが薄いと排気ガスの熱で触媒が瞬時に暖まり、ガスを素早く浄化できるというメリットがあります。今、量産ベースで30ミクロンの金属箔を使っているのはうちだけです。競合他社はいわゆる部品業で、素材自体を開発してはいません。素材からの一貫生産は、世界でも私たちにしかできない強みだと思いますね。

ディーゼル自動車用に使われている薄箔30ミクロンのメタル担体

ビジネスで4回ほど死にました(笑)。

製品の開発には、いろいろ苦労があったと思うのですが。

自動車会社と共同開発をスタートした当初、当社はメタルハニカムの素材だけを開発する役割でした。
実は、ハニカムの開発は別会社が担当していました。ところが、思うようなメタル担体がなかなかできず、その会社が途中でギブアップしたんです。そこで私たちが製品化することになり、1992年には量産にこぎつけました。それは良かったのですが、この業界は競争が激しくて4年経ったら次の商品を開発しなきゃいけないということに、やり始めてから気づきました。その頃は新日鐵にいたんですが、鉄鋼業は100年やって地道に技術革新をしていくビジネスでした。その頭があったんでしょうね。注文が全く無くなるなど、いろんな紆余曲折があって4回ほど死にました(笑)。事業を始めて10年経ったとき、ある自動車会社さんから「(鉄鋼業の人たちが)よく持ちましたね」と言われたことを覚えています(笑)。 ただ、このビジネスは市場が成熟したように見えますが、まだまだ伸びしろがあります。特に新興国は、日米欧の30年あとを追っている状況です。近年はグローバル指向でビジネスを展開していますが、海外に行くと「前に進もうよ」と言ってくれる人がたくさんいて元気をもらえます。チャンスはここにある、と思えますね。


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